家籠りが続いています。思うように動けないので冬山登山の沈殿を思いだしました。沈殿とは吹雪で行動出来なくてテントや雪洞の中でじっとしていることで略して「沈」と言っていました。大学2年の年末年始に北アルプス剣岳小窓尾根に山岳部OB合同で行きました。ニードルという岩峰手前で同時行動していた他パーティーの一名が転落し捜索活動に入りました。そのうち本格的な冬型の吹雪になって動けなくなりました。この地点でテントと雪洞で4~5泊はしたように思います。「沈」すると喰い伸ばしするので、朝はラーメン半分、昼は乾パン少し、夜はアルファ米とぺミカンの雑炊少しでひもじい思いをします。寝袋は濡れて凍って寒くて寝れません。トイレなどで外に出るときは完全装備でアイゼンまで付けて、雪まみれで帰ってくるとまた全部外さないといけません。ずっと風呂に入りたい、カツ丼食いたいと思って我慢を続け、その後一瞬の天気の好転をとらえて下山することが出来ました。

自粛生活が続いていますが、この冬山の沈殿生活と比べると天国のようなものです。太るほど食えますし、風呂にも入れ、暖かい布団で寝ることができます。自粛家籠り、いくらでも続けるぞ~。


(昭和56年年始 剣岳小窓尾根敗退下山中)